ユニオンの団体交渉外の活動への対応

Q：今ユニオンと団体交渉をしています。ユニオンのホームページに当社の実名を掲載され、ブログに当社とユニオンとの団体交渉内容がアップされています。これは団体交渉が終わったら消してもらえるのでしょうか？

A：近年は、ユニオンは団体交渉をしている会社名をホームページなどで公開し、ブログ等で団体交渉の内容等をアップすることが増えています。団体交渉中に削除に応じるケースは多くありませんが、団体交渉における和解の中で削除を条件とするケースも多いです。

ユニオンは団体交渉外でもさまざまな活動を行います。
ユニオンの団体交渉外の活動はその内容によっては、自社の従業員や取引先に影響を与えかねず、企業のレピュテーションリスク（評判）にもかかわってきます。
そのため、団体交渉中の企業としては、ユニオンの団体交渉外での活動においても適切な対応が求められます。
以下では、ユニオンの団体交渉外の活動の例について解説いたします。

1　労働基準監督署の調査

ユニオンは、団体交渉の継続中に、労働基準監督署に残業代未払の申告を行うという戦略をとってくるケースがあります。
この場合、ユニオンの申告により、企業に労働基準監督署への来所要求が出されることがあります。
これに対する対応方法はいろいろあると思いますが、組合との二重交渉を避けるため、労働基準監督署に対し、団体交渉の経緯等を説明した上で、団体交渉の区切りがつくまで待ってもらうよう交渉することがあります。
もっとも、労働基準監督署によっては、そこまで待ってもらえない場合もあります。その場合には、労働基準監督署対応とユニオンとの団体交渉を並行して行わなければなりません。
なお、企業としては、労働基準監督署と対立してよいことはありませんので、無駄な対立を避ける方針がよいと思われます。

２　ビラ配布

ユニオンは、自己の要求を進めるため、団体交渉継続中にビラを会社の敷地の内外で配布することがあります。
会社の敷地内であれば、ユニオンが会社の許可を取らずにビラ配布をした場合に違法になることがあります。
もっとも、違法になる場合であっても、ビラ配布を理由とした従業員の懲戒処分は慎重に判断する必要があります。裁判例では、ビラ配布をした従業員に対する懲戒処分が違法になったケースもあります。
また、会社がビラ配布に対抗できるかどうか判断するため、ビラ配布がされた場合、配布されたビラを集め、ビラの内容をチェックすることも重要です。
そのビラに名誉毀損的な表現が認められるような場合に従業員の懲戒処分が有効になった裁判例もあります。

３　ブログへの掲載

ユニオンは団体交渉をしている会社名をホームページなどで公開し、団体交渉の内容等をアップすることがあります。
この場合、団体交渉中に削除に応じるケースは多くありません。しかし、ユニオンのホームページで会社名が公開されてしまったからといって、実際、取引関係に直ちに影響が生じる場合は少なく、焦って判断を間違えないことが肝要です。
ちなみに、ホームページへの掲載は団体交渉が和解により終了する場合には削除されることが多いです。

４　街宣活動

ユニオンは、会社の敷地付近にとどまらず、親会社や取引先にまで街宣活動を行う場合があります。
違法な街宣活動であれば、差し止めや損害賠償請求が認められる場合もあります。
このような親会社や取引先への街宣活動に対しては、関係各所に事情説明等をして理解をしてもらうことも重要になります。
ちなみに、ユニオンが街宣活動を行う場合、所轄警察署に道路使用許可をとる場合がありますので、その情報を入手できれば、事前に街宣活動予定がわかることがあります。

５　職員・関係取引先への説明

ユニオンの団体交渉外の活動は、従業員や関係取引先に影響を与え、会社に要求を通すことを目的としてなされます。
これらの活動は組合活動の自由、表現の自由との関係で効果的な法的対応が難しい場合も多いといえます。
会社としては、組合の団体交渉外の活動について、対応職員・関係取引先に対し適切な説明を行い、各所に対する影響を最小限に抑えることが重要です。

６　まとめ

ユニオンは団体交渉外でもさまざまな活動を行う場合があります。
会社としては、予想外の行動を起こされても焦らず、従業員や取引先への影響を最小限に抑えるよう、冷静かつ適切に対処することが求められます。
ユニオン対応は、専門的な知見が必要になるため、ユニオンの活動で困った、ユニオンから団体交渉の申し入れが届いたというような場合には、弁護士等の専門家にご相談されることをお勧めします。
ユニオンとの団体交渉でお困りの場合には、お気軽に当事務所までご相談ください。
また、顧問弁護士としても、団体交渉を含む会社のさまざまな問題について対応できますので、お困りごとがある際にはご相談いただけますと幸いです。
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