就業規則等の社内規定の整備や労務管理の見直しをしたい

よくあるご状況

  1. 書籍に掲載されていた就業規則等の社内規定をそのまま使用している、または、社会保険労務士にスポットで依頼して就業規則等の社内規定を作成したが、会社の現状に合致したものではない。
  2. 設立時、同業他社から貰った就業規則を今までずっと使用しており、最新の法改正等に対応していない。
  3. 社内規定をちゃんと作成しているつもりだったが、従業員から残業代で訴えられてしまった。
  4. そもそも就業規則等の社内規定を作成していない。

以上は、私が相談を受けた企業、特に運送、物流、タクシー業界でよくある状況です。
上記に当てはまると思った会社はちょっと注意が必要かと思います。
私が法律相談を受けた会社では、全く就業規則等の社内規定を作成していないという会社はあまりなく、ほとんどは就業規則を作成していました。
しかし、就業規則はあるものの、実際にどのような内容が書かれているかを、十分に把握していない経営者の方もたくさんいらっしゃいました。中小企業の場合では、仕事をする上で就業規則を確認する機会がそれほど多くはないことも事実で、作成した就業規則の内容について忘れてしまっていることもあるようです。
就業規則を放置した状態が続くと、規定の内容が原因でトラブルが生じる可能性もあります。
就業規則等の社内規定は、いわば会社のルールです。
未払い残業代の請求を予防し、請求された場合に被害を最小限に食い止めるためには、会社のルールである社内規定を整備し、労務管理を適切に行うことよりも効果的な対策はないと思います。

就業規則の整備は労務管理とセットで

よくあるのは就業規則を完璧なものにしたぞと意気込んでいても、会社の現状に合致していなかったり、就業規則で定めた運用を会社が実際に行っていなかったりするため、就業規則の条項の効力が否定されてしまうような場合です。
例えば、残業を事前申請にする定めを設けたが、実際は事前申請なくても残業を認めていたり、事前申請のやり方をそもそも周知していなかったりと定めが形骸化してしまっている場合には、事前申請がないからといって残業ではないという会社の主張は通りにくいでしょう。
このように、就業規則等の社内規定は、会社が十分に運用できるような内容でなければなりません。社内規定は会社の現状・運用に合致している必要があるのです。
未払い残業代のリスクを減少させるには、就業規則等の社内規定の整備に加えて、適切な労務管理まで行う必要があります。
そのため、会社で運用が難しい部分においては、あえて就業規則等の社内規定を曖昧に作成するという戦略もあるのです。
重要なのは、会社の風土や状況に合致した社内規定を作成することなのです。

定額残業制度が否定された時のリスクの大きさをご存知ですか?

給与の明細に定額残業代(固定残業代)の項目を設けており、残業代を支払っているから大丈夫、このように考えている会社も多いかと思います。
しかし、裁判ではこの定額残業代が否定されることも多いです。
しかも定額残業代が否定された場合、①定額残業代分の残業代が未払いとなる、②定額残業代が残業代計算の基礎賃金に含まれてしまう、③判決では付加金の支払いまで命じられるといったリスクがあります。
定額残業代制度を導入したから安心というわけではなく、ちゃんと法的に有効と判断されるような規定になっているのか、運用上も定額残業代として法的に有効と判断されるようなものかというのが重要になってきます。
定額残業代の導入も、就業規則等の社内規定にただ記載すればよいというわけではなく、定額残業代として有効になるような運用をしなければなりません。
その他にも、歩合給から残業代を控除する形で支払っていたり、歩合給を残業代としてしはらっていたり、実質歩合給で算出した金額を基本給や残業代等の手当てに振り分けていたりするような場合も制度が否定される可能性があるため注意が必要です。
以上より、

就業規則の変更の難しさをご存知ですか?

就業規則をとりあえず作成して問題があれば変更すればよいと考える会社もあるかもしれません。
しかし、法律は、従業員との合意がない場合の就業規則の不利益変更を原則として認めていません。
しかも、不利益変更にあたるかどうかについては、不利益変更の間口がかなり広いことから、多くの事例で不利益変更に当たります。
例えば、従業員の不利に働く部分が一部でも存在すれば、その一部が不利益変更に当たりますし、もっと言いますと、不利益が生じる可能性にとどまる場合も不利益変更に当たります。
例外的に、不利益変更に当たっても、合理的な変更であって、かつ変更後の就業規則が周知されていれば、各従業員の同意がなくとも例外的に有効になりますが、このハードルは低いものではありません。
このように就業規則の変更のハードルは高いものになりますので、就業規則の変更にはその効力を争われるリスク、すなわち紛争リスクがつきまとうことになります。
そのため、就業規則の変更については専門家の意見を聞きながら慎重に行う必要があるのです。

周知義務の不備にご注意を

就業規則は作成するだけでは足りません。
会社は、作成した就業規則の内容を従業員に周知・徹底させる義務を負います。
労働基準法などにより、就業規則は作業場に掲示するとともに、従業員が就業規則の内容を確認できるようにしておく必要があります。
作業場内に就業規則等を置いていた場合でも、従業員から訴えられたときに、就業規則等があったなんて知らなかった、会社から教えてもらっていないなどを理由として就業規則の周知義務違反を主張されることがあります。
このような主張をされた場合の対策として、雇用契約書に就業規則等の周知に関する規定を設けるなど、周知義務の書面化までやっておくと安心でしょう。

社内規定の整備は専門家にご相談を

就業規則等の社内規定の整備は、労働問題に強い弁護士や社会保険労務士に相談するのをお勧めします。
特に紛争リスク、訴訟リスクを減らすためには、労働問題に強い弁護士と会社が協働して社内規定を作成し、労務管理を行なっていくべきです。
その会社の実情に合った社内規定を一緒に作成し、未払い残業代が請求されにくい強い仕組みを会社と一緒に作っていきたいと考えております。
就業規則等社内規定でお困りのことがございましたら、ぜひ一度ご相談いただければ幸いです。

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